連日ニュースで伝えられる新型コロナウイルス情報について、いつも気になることがあります。メディアによって「陽性者」と「感染者」が混同されて使用されていることです。ニュース等で「新規感染者数」として示される数字。実は厚生労働省や東京都のホームページでは「陽性者」として公表されている数字です。

「陽性者」の中には無症状の方も大勢います。この方々は厳密に言うと「感染者」ではありません。普通のカゼやインフルエンザも同じですが、ウイルスが体内に侵入し、増殖して初めて「感染」が成立します。人間には外敵から身を守る「免疫機能」があるので、仮にウイルスを吸入したとしても必ず感染するわけではありません。しかし新型コロナの診断に用いられるPCR検査は、粘膜にウイルスが数個でも付着していれば「陽性」になることがあります。

保健所では陽性者との濃厚接触者を割り出し、無症状者でもPCR検査を行っています。陽性者が増えている現在、その数はかなり増えています。町田市医師会PCRセンターでも濃厚接触者のPCR検査を行っていますが、陽性者の約半数はこの無症状の濃厚接触者です。これだけ市中感染が広まってくると、「陽性者」の増加は止めようがないように思います。重要なのは拡散リスクが高く、入院を要するような「感染者」を増やさないことです。そのことが医療供給体制の維持に繋がります。

現在公表されている「陽性者」の中にどれだけの「感染者」が含まれるのか知りたいところですが、数字を出さないところをみると、油断をさせないための情報操作かもしれません。

また経済との両立を考えると、「無症状陽性者」と「感染者」の対応についても分けて考えた方が良いのではと思います。現在は一人でも「陽性者」が出ると、会社や学校等で過剰な反応をしているところが多いように感じます。「感染者」が出た場合はこれまで通り慎重な対応が必要と思いますが、「無症状陽性者」の場合はより慎重な感染対策を行っていれば、その他は通常通りの営業や授業を継続して良いと思います。(実際には保健所の指示で動いていただくことになりますが)

いずれにしても油断は禁物です。「免疫機能」に不安がある65歳以上の陽性者が増えているところも気がかりです。きちんと感染対策(3密回避、マスク、手洗い)を実践して、この冬を乗り越えましょう。

稲垣耳鼻咽喉科医院