受け継ぐ者として
去る令和4年7月20日、先代院長である父・稲垣健一(享年81歳)が永眠しました。故人の遺志を受け継ぎ、亡くなった当日も含め診療は休まずに行いました。
先日七七日忌法要を終え、コロナ第7波も落ち着いてきましたので、少し父のことを振り返ってみたいと思います。
父は大学を卒業後、稲垣耳鼻咽喉科医院の2代目院長として、私が生まれる前から40年以上の長きに渡って地域医療に従事してきました。「自宅開業」であったことから、私は幼い頃からずっと父の姿を見て育ちました。医師として働く父の背中は頼もしく、「自分もいつかは」という思いが自然に芽生えたのだと思います。私のみならず、3人の兄弟が皆医師の道に、しかも耳鼻咽喉科医の道に進んだのは、父の影響が大きかったからでしょう。
父は誰よりも母を愛し、そして家族を愛してくれました。常に信念を持ち、私達が間違ったことをすると厳しく叱ってくれました。
父が遺してくれた言葉「和氣大樹」は我が家の家訓として、また医院の基本方針として、受け継いでいかなければならないと思っています。大樹の如く広い心を持って、人々が安心して集える場所になるように、そんな願いを込めた言葉です。父は医院の診療のみならず、医師会や地域団体との関わりも大切にし、「和氣大樹」を実践してきました。その遺志を私達も受け継がなければなりません。
9年前に代替わりをした後、父は私の示した方針に全て同意してくれました。事業継承の難しさについて多くの事例を見聞きする中で、先代との考え方の違いによるトラブルはよく耳にするところです。私がどこまで先代の意を汲んで事業を進めて来られたか自信はありませんし、父も言いたいことは沢山あったと思います。それでも私を信頼して、託してくれた「大樹」のような父の心の広さに私は救われたと思っています。
大切な人を亡くした悲しみは消えませんが、父への感謝の心を忘れずに、これからも地域の皆様の健康のために尽くして参る所存です。