コロナ第7波の対応について
久し振りにブログを更新します。
第7波による医療逼迫は当院も例外ではなく、特にこの2週間余りの負担は尋常ではありません。
当院で診断した新型コロナ陽性者は累計1200名程度ですが、この1か月だけで500名余りと急増しています。
最近のある1日の様子です。
8:30~ 診療準備、要観察者への電話診療
9:00~ 午前診療開始(通常診療と発熱外来同時進行)
12:00 有症状者への抗原検査キット配布(20件)
昼休み中 自己検査陽性者の電話診療(8件) *電話診療1件5分程度
14:00~ 午後診療開始(通常診療と発熱外来同時進行)
18:00 有症状者への抗原検査キット配布(20件)
診察終了後~22時頃 自己検査陽性者の電話診療(36件)
23時~3時頃 発生届(HER-SYS)入力(55件) *HER-SYS入力1件4分程度
診療時間中はスタッフもフル回転です。通常診療業務に加えひっきりなしの電話対応、発熱外来、電話診療のためのメール交換(保険証や検査キットの写真をメールで確認)、検査キット配布等、さながら野戦病院のような煩雑さです。
当院では8月8日から抗原検査キットの配布を開始しました。
自宅での抗原検査または民間PCR検査で陽性判定が出た方は原則電話診療、未検査の方にはキットを配布し、発熱外来は高齢者や検査が出来ない乳幼児等に絞ったところ、前週まで多かった診療を断るケースが殆どなくなりました。
それはそれで良いのですが、電話診療が増えたことで昼休みや診療後の負担がかなり増えてしまいました。
陽性診断件数も連日30~50件程となり、医師一人で行うには発生届の入力(住所や電話番号、既往症、現在の症状、ワクチンの実施年月日、感染経路まで詳細に入力)だけでもかなりの負担です。
恐らくこの状況は2週間が限界と思っています。
重症化リスクが高く、本当に必要な診療や情報収集作業であれば歯を食いしばってでも頑張る覚悟ですが、感覚として少し違ってきているのも事実です。
実際、電話診療で処方を要するケースは2割程度であり、多くは常備薬等で対応していただいていますので、従来であれば受診自体しなかったようなケースも多く含まれます。ただ、多くの「軽症」とされるケースでも発症後数日間は発熱、咽頭痛、倦怠感等で苦しい思いをされている方が多いのも事実であり、そのような方へは「数日間の辛抱です」と励ましながらお手持ちの解熱鎮痛薬等で凌いでいただいています。
現在「2類か5類か」という議論が方々でされていますが、もし5類になれば、処方不要のケースは自宅療養のみとなり、発生届の手間もなくなります。コロナ以外の疾患も含め、本当に治療が必要な方に医療資源を集中できます。
「全数把握」についても、例えば当院で毎日陽性者数のみ報告するだけで良ければかなり負担は軽減されます。
コロナが2類相当である現在、治療費は全額公費負担ですが、電話診療の際に多くの方が「診療費はどのようにお支払いすれば良いですか?」と尋ねてきます。5類になって保険診療になっても、多くの国民は納得すると思います。
当院で診断後、入院となったケースは第7波以降1例のみ(0.2%)であり、今のコロナは「感染力の強いカゼ」という印象です。
各自が抗原検査キットを入手しやすい状況を作ったうえで、例えば「陽性者は発症後7日間自宅療養。検査が陰性でもコロナを疑う症状のある方は医療機関を受診。自宅療養解除後や濃厚接触者は1週間程度外食や他人との接触を控える」などの簡単なメッセージで自粛を促すというのでは甘過ぎるでしょうか?
コロナが未知の病で、重症化率が高かった昨年までとは状況が変わっています。
無駄を省いて、医療資源が適切に配分されるよう、行政には早急な制度の見直しを求めたいところです。
稲垣耳鼻咽喉科医院