新型コロナ第6波で思うこと③
<外来崩壊の始まり>
前に新型コロナについて「2類か5類かは本質的な問題ではない」と書きました。「人命を守る」という意味ではその考えは今も変わりませんが、感染者の急増で「2類」であるための弊害が出てきました。
「2類感染症」の場合、診断した医師は「発生届」を保健所に提出し、入院を前提に保健所が「健康観察」を行なうことになっています。第4波までは概ねその通りの流れでしたが、第5波になって病床が不足したため「入院の前提」が事実上なくなりました。そして現在の第6波では前回もお伝えした通り、「健康観察」も保健所から診断医にシフトするようになりました。
当院でも連日10人以上の陽性者とそれを上回る発熱外来受診者が来院します。通常の診療を行いながら、発熱外来では防護服を着て、それぞれ個室や車内で対応するので正直なところ効率的に診療することが難しいです。それでも本質的な診療の忙しさはそれ程苦になりません。
一番負担に感じるのは「2類」であるが故に「発生届」を作成し、全員の「健康観察」を行うことです。当然診療時間外に行うのですが、発生届作成に5〜10分、健康観察にはMY HER-SYSというアプリがあるので、感染者ご自身に体温や症状を毎日入力していただいてそれをチェックするのですが、観察期間が平均1週間程度として40〜50人分チェックするだけでも結構大変です。調子が悪そうな方には電話で連絡をし、観察期間終了前にも必ず電話で状態を確認して隔離解除の指示を出します。またHER-SYSへ健康状態の入力作業もあります。「今だけ頑張ろう」と続けていますが、長期化すると体力的にも限界が来そうです。
もし「5類」になった場合、発生届の作成や全員の健康観察は不要になります。勿論調子が悪い方のフォローは個々に必要ですが、負担はかなり少なくなります。「デルタ株」のように生命の危険を感じることが少ない「オミクロン株」については、現場感覚で全員の健康観察は必要不可欠ではないと感じます。
昨日短縮された濃厚接触者の「隔離期間」と同様に、疾患の本質ではない、制度による弊害がここにも出てきています。医療現場では出来ることを一生懸命やっています。制度には従わなければなりませんが、「本質的な」仕事に集中出来るよう、賢明な政治判断を期待しています。