研究費もクラウドファンディング
数年前から色々なところでクラウドファンディングが盛んに行われています。昨年はコロナ禍で苦しんでいる地元の飲食店をサポートするクラウドファンディングにも参加しました。
今回、大学の後輩が立ち上げた研究費のクラウドファンディングにも参加してみました。
https://academist-cf.com/projects/219
皆さんは「顔面神経麻痺」という病気をご存知ですか?過去に感染した水疱瘡やヘルペスなどのウイルスが体内に潜伏感染し、ある日突然表情筋を動かす顔面神経が麻痺するという病気です。発症すると片方のまぶたや口元が動かなくなってしまいます。
日本では年間約3万人が罹患する病気で、当院にも時々受診される方がいます。通常は世界的な標準治療に則って治療を行うのですが、1〜2割の方に麻痺の後遺症が残ってしまいます。他にも治すことのできない病気は沢山ありますが、顔面神経麻痺はその方から笑顔を奪い、人生を変えてしまいます。ですから治療を行なったにもかかわらず麻痺が残ってしまった場合、本人は勿論の事、治療を担当した我々医師もとても辛い気持ちになります。
今回のクラウドファンディングは、そんな顔面神経麻痺の世界的標準治療を見直そう!という挑戦への支援です。これまでにも臨床医の経験から「もっとこうすれば」という治療法の提案はいくつかありましたが、どれもエビデンス(科学的根拠)に乏しく、標準治療にはなり得ませんでした。今回の挑戦は非常にシンプルで、これまで標準とされていた治療薬の投与量を増量する事で治癒率が改善するかどうか判定することを目的としています。
こうした研究には臨床研究法という法律の定めがあって、厚生労働省認定臨床研究審査委員会の承認、定期報告(驚くほど高いです)、臨床研究保険、統計家への委託費、たくさんの症例に関する情報集積のためのセキュリティの高い電子入力システムの設計運用といった研究継続の様々な様々な必須経費がかかります。とても研究者の自腹で賄えるものではありません。
ひとりでも多くの方にこのプロジェクトにご賛同いただき、研究成果によって将来この病気のために暗い人生を送る方が少しでも減らせることを願っています。
皆さんの身近にも顔面神経麻痺の後遺症に悩む方がきっといると思います。世界中に笑顔を取り戻すため、是非ご協力下さい。