現在、新型コロナウイルス感染症第6波の真っ只中です。当院でも連日陽性者が出ており、多くが10台~30代の若年者です。幸い重症者はなく、自宅または宿泊施設療養をされています。

現在流行中の「オミクロン株」は肺への移行・増殖が少なく、第5波のときの「デルタ株」とは異なり、酸素吸入を必要とするような中等症以上に悪化する方は少ないようです。これは病原性の変化のみならず、多くの方がワクチン2回接種を完了している成果と考えます。実際、現在集中治療室に入院中の方の7割以上がワクチン未接種者とのことです。

第5波の時は以前ブログにも書きましたが、医療逼迫を肌で感じる状況でした。それに比べて第6波はどうでしょうか。

連日発表される陽性者数は各地で過去最高を記録していますが、第5波の時のような命の危険を感じる逼迫感はありません。今回から自宅療養者の健康観察(最短で発症から10日間)は保健所だけではなく、医療機関でも行っています。

当院でも1月19日現在、13名の健康観察を行っていますが、殆どの方が2~3日で熱が下がり、症状ものどの痛みや咳といったいわゆる「カゼ」の症状です。勿論高齢者や持病をお持ちの方が感染した場合など、一定の割合で重症者は出るので、感染者の急激な増加は避けなければなりません。しかしこのような状況下で、従来通りの感染者対応で良いのでしょうか?

よく議論されている2類か、5類かの問題は本質的ではないと思っています。感染者が増えることによって社会が機能不全に陥ること、医療崩壊が起きることが一番の問題なので、それが起こらない程度の感染拡大は、むしろ多くの人々が抗体を持ち、早期収束に繋がると考えます。まさに”with コロナ”の考え方です。海外ではこの流れができつつありますが、日本人の国民性からは受け入れ難いのかもしれません。

「社会の機能不全」に関係しているのが感染者、濃厚接触者の「隔離期間」の問題です。つい先日、濃厚接触者の隔離期間が14日から10日に短縮されましたが、濃厚接触者の場合、感染者の隔離が終わった日から10日間の隔離が必要になるので、正味3週間の隔離になります。これでは社会が麻痺してしまうので、感染しないように細心の注意を払わなければなりません。そうすると「蔓延防止策」として飲食店の営業時間制限やアルコール提供の制限が必要になってしまいます。確かに第5波の時ように重症化率が高い状況では必要な措置だったとは思います。

ワクチン、抗体カクテル療法、経口薬という武器も備わり、重症化率が抑制されている現在の状況下では、ある程度の感染リスクを受け入れ、隔離期間を短くしても良いと考えます。例えばアメリカのように現在の半分の5日にした場合、陽性者数はある程度増加しますが、社会の機能不全は抑制されます。しかしもう一つの問題である「医療崩壊」を起こさないためには、まだまだ皆様の協力が必要です。マスク着用、手指消毒、換気といった既に定着した習慣は勿論、家族以外との飲食は出来るだけ避けるべきです。特に高齢者や持病をお持ちの方、ワクチン未接種の方は注意が必要です。また3回目のワクチン接種も是非受けていただきたいです。ですが社会全体としてみれば、飲食店の時短営業やアルコール提供の制限は、むしろ弊害の方が多いように思います。(店舗によっては売り上げが落ち込むと思うので、その点の行政的な手当ては必要と考えます)今回の「オミクロン株」ではもう少し感染者が増えたとしても(今のところ)日本の医療は持ちこたえられそうです。

稲垣耳鼻咽喉科医院