鼻水・鼻づまり
・アレルギー性鼻炎・花粉症
外部からの刺激に対する免疫の過敏反応をアレルギーといいます。アレルギー性鼻炎は空気中の刺激物(抗原)が鼻の粘膜を介して「くしゃみ」「鼻水」「鼻づまり」の3大症状を引き起こす、アレルギー反応のひとつです。花粉症は花粉の刺激によって起こるアレルギー反応の総称で、主に鼻炎や眼の痒みといった症状が出ます。
アレルギーは「病気」というより「体質」と考えた方が良いでしょう。遺伝的要因が大きく、環境によって発症したり、しなかったりします。発症のきっかけとなる原因物質(抗原)は、ハウスダスト、ダニ、花粉(スギ、ヒノキ等)、カビ、動物(イヌ、ネコ等)等々様々ですが、小児ではハウスダスト(通年性アレルギー)が、成人では花粉症の7割といわれるスギ花粉(季節性アレルギー)が代表的です。
発症の状況から概ね診断可能ですが、原因物質の特定を含めた確定診断は血液検査で行います。原因物質が特定できると、対策を立てやすくなるメリットがあります。またその時点でのアレルギー反応の強さを調べるため、鼻汁好酸球検査を行うこともあります。
アレルギー性鼻炎対策の基本はやはり「抗原に触れないこと」です。花粉症の方はシーズン中、セルフケアとして外出時のマスク着用が最も有効で、その他にも花粉を室内に持ち込まない工夫(花粉の付着しにくい服装)や室内での飛散を防ぐ工夫(加湿器の使用)、鼻洗浄(自宅でできる鼻洗浄器を当院にて販売中)も有効です。しかし残念ながらそれだけで症状を完全に抑えることはできません。毎年花粉症でお悩みの方には、「初期療法」をお勧めします。花粉が飛散する1~2週間前から抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬の服用を開始することにより、シーズンを通して症状を軽減することができます。それでも花粉飛散のピーク時には症状の悪化が予想されますので、内服薬や点鼻薬を追加投与した方が良いでしょう。最近は水なしで飲める錠剤や1日1回の薬が増え、使い勝手が良くなっています。点鼻薬も1日1回で効果が持続するタイプが主流となり、以前より使いやすくなっています。また、眼の痒みを伴う方には点眼薬も処方しています。
重症の花粉症や通年性アレルギーでお悩みの方には「手術療法」も有効です。手術療法は鼻の粘膜をレーザーや薬物で灼(や)いて、抗原が付着してもアレルギー反応が起こりにくくする治療法です。当院ではトリクロール酢酸を用いた治療を行っています。特に強い鼻づまりでお悩みの方には有効性が高く、比較的簡便に行うことができます。薬を2~3種類飲んでも症状が改善しなかった患者さんが、「薬なしで大丈夫」と大変喜ばれることもあります。(詳細リンク)
アレルギー性鼻炎を根本的に治す唯一の治療法として「減感作療法」があります。以前は数年間通院と注射を繰り返す必要があり、大変根気と労力を要する治療でしたが、平成26年から口腔内投与による簡便な減感作療法(舌下免疫療法)が承認されました。当院でも平成26年10月より治療が受けられるようになりました。(詳細リンク)
・副鼻腔炎
鼻は呼吸に重要な働きをする器官です。直接空気が通る鼻腔と、鼻腔から連続した副鼻腔から構成されていて、全て粘膜で覆われています。鼻粘膜が炎症を起こして鼻づまりや鼻汁といった症状が出ている状態を鼻炎、更に副鼻腔粘膜まで炎症が波及し、頭痛や頬(ほほ)が重たい感じ、ドロドロの鼻汁が大量に出るなどの症状が生じている状態を副鼻腔炎(俗に言う蓄膿症)といいます。それぞれ風邪などをきっかけに急性に起こる場合と、症状が慢性化している場合があります。
急性鼻炎・急性副鼻腔炎は風邪などのウイルスや細菌感染が原因です。免疫力が低下した時に発症しやすくなります。また慢性鼻炎・慢性副鼻腔炎はアレルギー体質や鼻中隔彎曲症など鼻の形態異常によって、慢性的な鼻粘膜の肥厚や副鼻腔の換気障害が原因で発症します。時に肥厚した粘膜が「鼻茸(鼻ポリープ)」として鼻腔内に見られることがあります。
多くの場合、鼻の所見(粘膜の肥厚や鼻汁の状態)から診断できますが、鼻腔内に異常がなくても画像診断で慢性副鼻腔炎と診断されることがあります。
「気道としての鼻の役割を取り戻す」ことが最終目標です。鼻は空気が良く通れば良好な状態を維持できます。ですから「鼻をかむこと」が治療の第一歩です。ただし、やり方によっては中耳炎など耳を悪くする可能性があるので、正しく鼻をかむこと(片方ずつ、丁寧に)が大事です。
急性期には感染をコントロールすることで改善が見込まれます。風邪などウイルスが原因の場合、特効薬はありません。鼻処置による局所療法や粘液調整剤などで症状を緩和しつつ、免疫力の回復を待ちます。ですから薬に頼るだけでなく、「体を休めて、体力を回復させること」が最も重要です。また細菌感染を認める場合には、抗生物質が有効です。
慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎に対しては、保存的治療と手術療法があります。保存的治療としては内服薬投与や鼻粘膜収縮薬の使用が一般的です。これらの治療で症状の改善が見られれば2~3ヶ月治療を継続します。また、鼻洗浄も有効な治療です。当院では自宅でできる鼻洗浄器(本体 2,300円)を販売しています。これらで症状の改善が見られない場合、手術(鼻中核矯正術、鼻粘膜切除術、副鼻腔根本術など)も検討します。
・鼻中隔彎曲症
鼻腔の中心にある鼻中隔が曲がった状態になり、それが原因で鼻づまりや鼻出血などを起こすものを鼻中隔彎曲症といいます。日本人の8割は、この鼻中隔が左右どちらかに曲がっていると言われています。鼻づまりなどの症状が軽度であれば内服薬や点鼻薬での対症療法を行いますが、重度の場合は鼻中隔を矯正する手術を行うこともあります。