その他診療

風邪について

風邪について

風邪の症状(発熱、鼻水、せき、たん)がある時、基本的には耳鼻科、内科・小児科、どちらでも対応は可能です。一般的な処方薬もほぼ同じです。 耳鼻科と内科・小児科の一番大きな違いは、「処置」をするか、しないかです。 「鼻が詰まって寝苦しい」、「ネバネバした鼻水が溜まって、かんでも奥の方に残ってしまう」、「鼻の奥がスッキリしない」、「痰が詰まって苦しい」、そんな「早く何とかして欲しい」症状を、耳鼻科の処置で改善させることができます。もちろん多少の苦痛を伴うこともありますが、すぐに症状を和らげられる「処置」をすることが、耳鼻科の大きな特徴のひとつです。
また鼻やのどの状態を、時には内視鏡等を使って正確に診断できるのも、耳鼻科ならではです。

特に耳鼻科をおすすめする場合
  • 「耳が痛い」
  • 「耳が詰まった感じがする」
  • 「耳だれが出た」
  • 「鼻が詰まる」
  • 「鼻水が出る」
  • 「鼻水がのどにまわる」
  • 「のどが痛い」
  • 「のどが詰まる」
特に内科・小児科をおすすめする場合
  • 「胸がゼーゼーする」
  • 「呼吸をするとヒューヒューいう」

これらは気管支炎や肺炎、または喘息を疑う症状です。のどから下の病気を疑う場合は、内科・小児科で聴診や胸部レントゲン検査を受けましょう。

アレルギー性鼻炎・花粉症の手術について

アレルギー性鼻炎の治療にはガイドラインが作成されています。ガイドラインによると、抗原の回避(マスクの着用や室内の清掃)は原則行うとして、最も一般的な治療は薬物療法(内服薬や点鼻薬)です。様々な薬剤が発売されており、多くの患者さんは薬物療法のみで症状を抑えることができます。しかし重症例では十分な効果が得られないこともしばしばあります。 薬物療法以外の治療法として、手術療法があります。手術療法にはいくつかの方法がありますが、鼻づまりの強い人に対して、鼻の粘膜を切除または処理し、アレルギー反応を起こしにくくするのが基本です。
代表的な治療法は、下鼻甲介粘膜切除術(効果高く長持ち、出血リスクあり)、レーザー手術(効果2-3年、機材が高価、入院不要)、トリクロール酢酸塗付法ですが、それぞれに長所、短所があります。

当院で行う手術:トリクロール酢酸塗付法について

当院で行っているトリクロール酢酸塗付法は、外来で比較的簡単に行える治療法です。まず鼻の中を20分程麻酔し、トリクロール酢酸を湿らせた綿棒で粘膜表面をなぞるようにして塗布することで酸が化学反応を起こし、鼻粘膜表面の受容体タンパクを分解します。実際の施術時間は2~3分程度です。術後1~2週間は粘調な鼻汁が出たり、鼻汁が中で固まって鼻が詰まったりすることがありますが、徐々に改善してきます。術後2週間、術後処置のために受診していただく必要があります。 効果の持続期間には個人差がありますが、概ね1~2年程度で粘膜が再生し、効果が薄れてきます。術後の経過により、再手術が必要になることがあります。ただし、鼻中隔弯曲(鼻の内部構造が曲がっている)の強い方には実施できない場合があります。また効果が不十分なときは薬物療法を並行して行うこともありますが、術前に比べて薬の量を減らすことができます。 手術は予約なしで受けられます。施術時間は麻酔を含めて30分程度、費用は1回6,000円程度(保険診療3割負担の場合)必要ですが、術前に比べて普段の薬剤費を抑えることができます。 最終的な治療方針の決定は患者さん本人の自由意志によりますが、特に重症の鼻閉症状がある方にはお勧めの治療法です。スギ花粉症の方は、シーズン前(年末から1月末頃まで)の施術をおすすめします。

スギ・ダニアレルギーへの舌下免疫療法について

今や国民病ともいうべきスギ花粉症。そして子どもでもひどい鼻炎の原因となるダニアレルギー。当院でもこの2つのアレルギー性鼻炎に対する根本治療を行っています。 これまでアレルギー性鼻炎に対する治療法は、薬でくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった鼻症状や目の痒みなどを抑えたり、鼻の粘膜を手術によって抗原(花粉やダニ)に反応しにくくしたりする「対症療法」が中心でした。それに対し、舌下免疫療法はスギ花粉やダニに反応する体質そのものを改善する「根本的治療」です。
これまでも減感作(げんかんさ)療法と呼ばれる根本的治療はありましたが、注射で行うために頻回の通院が必要であり、また注射による痛みを伴うため、広く普及しませんでした。舌下免疫療法は自宅での投与が可能なため、より簡便な治療法といえます。どちらの治療法も原因となる抗原(スギ・ダニエキス)を投与し、徐々に抗原に反応しにくい体質に変えてゆくという点では同じですが、アレルギー全般に有効な万能治療ではありません。また「アナフィラキシーショック」など、治療による副作用にも十分な注意が必要です。
現時点では保険適応となる舌下免疫療法は、スギ花粉症、ダニアレルギーの2種類のみです。
治療の前提として、スギ花粉症またはダニアレルギーであることを確認する必要があります。血液検査で診断が確定したら、スギ花粉またはダニエキス製剤を舌の裏側に1日1回投与する治療を開始します。初回のみ副作用を確認するために院内で投与しますが、問題がなければ翌日から自宅で行っていただきます。最初は濃度の薄い製剤から、次に投与する薬の濃度を増やして、これを3年間継続します。その間は月に1回の受診を続ける必要がありますので、簡単とはいえ、なかなか根気のいる治療です。また舌下免疫療法は治療開始直後に副作用(強いアレルギー反応)が出やすくなるため、スギ花粉症の場合、飛散時期(1月~5月)には新規治療を開始できません。(ダニは開始時期の制限はありません) 治療に年齢制限はありませんが、きちんと内服ができる5歳以上を対象としています。

治療にかかる費用の概算は以下の通りになります。(3割負担の場合)

【初診時】初診料+アレルギー検査:約5,600円
*過去5年以内にアレルギーの血液検査を受けた方は、検査結果を持参してください。結果を確認できた場合に限り、初回のアレルギー検査なしで治療を開始致します。その場合の初回費用は、初診料(約1100円)+薬剤費(約500円) となります。
【2回目以降】再診料(約600円)+薬剤費(約1500円)
*鼻炎やその他の症状がある場合、他に処置、薬剤費がかかる場合があります。

70-80%の方に有効な治療です。また有効な方でも、完全に症状が消える方は20-30%程度です。それなりに根気も費用もかかる治療ではありますが、残念ながら全ての方に有効とは言い切れず、治療効果にも個人差があります。

無呼吸症候群について

無呼吸症候群について

「"いびき"がひどい」、「しっかり寝たはずなのにスッキリしない」、そんな症状でお悩みの方は「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。数年前から度々、電車やバスの居眠り運転による事故で、この病名がニュースで取り上げられるようになったので、ご存じの方も多いと思います。当院では「睡眠時無呼吸症候群」に対する検査、治療を行っています。「睡眠時無呼吸症候群」のほとんどが「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」といって、鼻からのどにかけての上気道に狭い部分があって、寝ている間に筋肉の緊張が緩むことなどによって気道が閉塞し、安定した呼吸ができなくなります。原因は体重増加や顎の形態(顎の小さい方)などがあります。 診断は、睡眠中の呼吸状態をモニターする検査で行います。当院では、検査用モニターを2泊3日で貸し出し、自宅で測定していただきます。測定後、データを解析して重症度を判定します。 軽症の場合は寝る時の体位の指導や、歯科・口腔外科でマウスピースを作成していただくように指導します。また無呼吸は軽度でも「いびきが気になる」という方には、「ナステント」というご自身で鼻に通して使うチューブをご紹介する事もあります。 重症の場合は手術やCPAP療法の対象となります。当院ではCPAP療法の導入、フォローアップも行っています。

慢性上咽頭炎の上咽頭擦過療法(EAT・Bスポット療法)について

上咽頭は鼻腔の一番奥、鼻とのどの境目にあたる部分です。上咽頭はウイルスや細菌の侵入を最初にキャッチする場所であり、風邪で最初に攻撃されるのが上咽頭ということになります。上咽頭には免疫システムがあり、免疫がしっかりしていれば風邪はすぐに治ります。ところが寝不足や体調不良で免疫力が低下した状態ですと、風邪は長引いて慢性化することがあります。
慢性上咽頭炎になると、様々な自覚症状が現れます。後鼻漏、咳、咽頭痛、咽頭違和感、頭痛、肩こり、全身疲労感、めまい、などです。理由は上咽頭が免疫機能の他、舌咽神経や迷走神経(自律神経)といった重要な神経や、リンパ管の密集地帯であるからです。
当院では経鼻内視鏡を用いた慢性上咽頭炎の診断と治療を行っています。鼻の穴から細長い内視鏡を挿入し、上咽頭をよく観察します(検査費用:保険3割負担で約1,800円)。
上咽頭炎があると、一見異常がないように見えても、綿棒で擦ることによって出血や粘液の分泌が多量にみられます。難しいのは、見た目だけでは正常と区別がつきにくいことです。他の病院で「異常なし」と言われた方でも、実際に上咽頭を擦ってみると、上咽頭炎が隠れていたというケースは多々あります。
治療は、上咽頭に1%塩化亜鉛を染みこませた綿棒を擦りつける「上咽頭擦過療法」(Epipharyngeal Abrasive Therapy=EAT【イート】、以前はBスポット療法と言われていました)という処置を、概ね週1回のペースで続けて行います。最初は強い痛みや出血を伴うことが多いのですが、早い方だと数回、多くの方が10回程度の治療で症状の改善を自覚されます。治療を続けるうちに、痛みや出血は少なくなってきます。
「つらい不調が続いたら慢性上咽頭炎を治しなさい」(堀田修著 あさ出版)という本が出版されています。長引く後鼻漏、咳、咽頭痛、咽頭違和感、頭痛、肩こり、全身疲労感、めまいでお悩みの方は、ぜひご一読の上、治療を受けられることをおすすめします。

めまいについて

良性発作性頭位めまい症

「仰向けに寝たら天井が回った」、「寝返りを打ったらグラグラ揺れる感じがした」、「じっと寝ていたらすぐに治まったが、起きたらまた回った」、そんな症状を繰り返すのが良性発作性頭位眩暈症です。時には吐き気を伴い、救急車で病院を受診する方も少なくありません。

原因
内耳の中の古くなった耳石(カルシウムの粒)が三半規管(バランスのセンサー)の中に迷い込み、頭を動かしたときにセンサーが誤作動を起こすことによって発症します。「特定の頭の動きをした時」「発作的に」「グルグル回る(またはグラグラ揺れる)」めまいが「数分以内に」治り、「繰り返す」のが特徴です。また何回も繰り返すうちに症状は軽くなってきます。通常古くなった耳石は自然に吸収されますが、運動不足の人はその働きが弱まり、発症しやすくなります。
診断
めまいがすると「眼振」といって、特徴的な眼球の動きを観察することができます。診断は特殊なメガネを使って、この眼振(規則的で持続時間が短い)を観察することで簡単にできます。
治療と予防策
三半規管に迷い込んだ耳石を追い出すことができれば治ります。この病気に特効薬はありません。唯一の治療法は運動療法です。診察時の眼振から原因となる耳石の位置が特定できれば、診察室で耳石を追い出す運動をサポートしますが、多くの場合は個人で「ラジオ体操」を行って頂きます。「ラジオ体操」は色々な方向に頭を動かす(前後、左右、回旋、ジャンプ)ので、イメージとしては内耳をかき回すことで三半規管から耳石を追い出すと考えて下さい。また症状が改善した後も体操を続けることで、再発を予防できます。最初めまいが強くて体操ができない場合は、寝返りから始めてみても良いでしょう。とにかく、寝てばかりいてはいつまでも治りません。
就寝時の枕の高さも発症に関与すると言われています。少し高めの枕にすることで発症を予防できるので、低めの方は枕を高めに替えてみるのも良いでしょう

高齢者のめまい

目が回る。ふらつく。高齢者のめまいは、若年者に比べて3倍発症しやすいと言われています。また、めまいによる転倒リスクは脳卒中と同等であり、十分な注意が必要です。
「手足がしびれる」、「呂律が回らない」等、めまい以外の症状を伴わない場合、多くは脳に問題はなく、「耳」が原因と考えられます。「耳」が原因のめまいであれば、リハビリ等の治療で改善が期待できます。

高齢者に多いめまい
  • 1良性発作性頭位めまい症

    耳の奥にある内耳の耳石(炭酸カルシウム)が関与する疾患で、「朝、起き上がった時に目が回る」、「上(下)を向くと目が回る」というような症状が特徴です。耳が原因のめまいの約半数はこの病気です。骨粗鬆症や寝返りをうたない(うてない)方に多く、リハビリで改善できます。

  • 2メニエール病

    回転性めまいの他、低音域の難聴、耳鳴り、耳の閉塞感など、耳の症状を伴うことが特徴です。多くはストレスが原因で発症します。責任感が強く、働き過ぎの方は要注意です。内耳が「むくむ」ことによって悪化しますので、むくみをコントロールできれば改善します。

  • 3薬剤性めまい

    高齢者は沢山の薬を服用していることが少なくありません。更に腎機能の低下によって、通常よりも「効き過ぎる」ことや、「副反応」としてめまいが生じることがあります。常時5種類以上の内服薬を服用している方の転倒リスクは約2倍との統計もあり、注意が必要です。

  • 4加齢性平衡障害

    体のバランスをとるには、視覚、前庭機能(内耳の働き)、体性感覚(足裏の感覚等)が重要です。しかし残念ながらこれら「入力系」は加齢によって徐々に衰え、予防法もありません。一方「出力系」の筋力はリハビリ等で維持することにより、転倒予防が可能です。

自宅で行えるめまいのリハビリ
  • 1仰向けに寝て、首を左右に連続10回:1日2回(首が痛い方は、左右に寝返り連続10回でも結構です)

  • 2ラジオ体操(頭を前後、左右、グルッと回す)

  • 3足を揃えて起立(開眼、閉眼 各1分)

  • 4その場で足踏み 50回、

転倒防止のコツ
  • 1杖をついて歩く(手の感覚がバランスをサポートします)

  • 2底の薄い靴を履く(足裏の感覚がバランスをサポートします)

    無理をせず、できることから試してみてください。