補聴器外来

健やかな聴覚を目指して
難聴・補聴器専門外来と
補聴器による聴覚リハビリテーションについて

超高齢社会を迎え難聴者の数は増加しています

2025年 高齢化率 30%を超える

治療介入が必要な難聴者
2024年  900万人

2030年 1400万人 

難聴は生活の質を低下させるだけでなく、認知機能の低下や社会的孤立・うつ症状への関連性も指摘されています。

健康長寿を目指すためには対応が必要です

認知機能低下および認知症リスク低減のためのガイドライン

世界保健機関(WHO)2019年

認知症予防12のポイント
「認知症予防12のポイント」の中に
「難聴」。関連率は8%と一番高い!
(2024年版でも7%と一番高い。)
日本耳鼻咽喉科学会は、学会として推進すべき社会貢献の中でも喫緊の課題の一つとして、難聴者に対する支援の拡充を進めています。
難聴者支援の方法として補聴器の普及・活用があります。

補聴器の有効活用には聴覚リハビリテーションが非常に大切

日本耳鼻咽喉科学会が進めている、難聴者に対する支援

  • 聴覚診療・補聴器診療に積極的に携わる補聴器相談医のHP公開
  • 補聴器の購入費用に係る医療費控除(2018年から開始)
     購入前に、補聴器相談医の診察を受け必要性があると判断された場合、「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を記載します。
     ⇒補聴器外来を設置している医療機関、もしくは「認定補聴器専門店」へ
  • 高齢者補聴器購入費助成制度の推進
     東京23区では数年前から徐々に広がり、2025年4月町田市にも導入!

聴覚リハビリテーションとは

「残っている聴こえの力を最大限引き出す」ことを目標とします。

脳の適応能力(可塑性)を活用し、十分な音を入力することによって聴覚を改善させていく」という考え方です。

聴覚障害の克服には難聴に対する理解とリハビリテーションが必要不可欠。
聴力低下の原因や程度は個人個人異なるため、対応法も異なる。
個人個人の病態に適した対応を実践していく必要がある。
補聴器はその対応法の一つで、活用法にも「コツ」があります。
⇒当院では、聴覚リハビリテーションの方法として、「宇都宮方式」を実践していきます。

難聴の原因には様々な病態があり、対応法が異なります

難聴の原因には様々な病態があり、対応法が異なります

伝音難聴

鼓膜の振動を内耳にうまく伝えられない ⇒ ボリュームが小さい状態

伝音難聴

感音難聴

振動を神経の信号にうまく変換できない ⇒ 脳に正しい音の情報が届いていない

難聴(疾患)の種類によって対応は異なる

伝音難聴

聞こえのセンサーが壊れていない状態
手術で改善の余地がある(慢性中耳炎など)
補聴器が非常に有効である
稀に手術が必要な状態(真珠腫性中耳炎)が隠れているので注意が必要

感音難聴

聞こえのセンサーが壊れてしまっている状態。(改善困難))
内耳有毛細胞の傷害の度合いによって、補聴器の効果に個人差が大きい。
軽度~中等度の聴力障害の場合は補聴器で対応可能)
高度聴力障害がある場合は公的補助あり。(身体障害者認定、人工内耳手術)

この「内耳有毛細胞の傷害の度合い」、言い換えれば、実生活上の「聞こえの質」を評価する必要がある

⇒ 「語音聴力検査」を受けて、対応法を検討しましょう。

補聴器のイメージは良くない?!

難聴や耳鳴といった「聴覚障害による生活の質の低下」を、「年齢のせい」と諦めていませんか?
視力が低下すれば眼鏡を使用するが、補聴器は敬遠されがち

それは、
補聴器に対する印象が悪いこと、正しい知識が不足していること
が誘因であると考えます。

補聴器は、「生活の質を上げるための道具」

「始なきゃいけないもの」ではない。しかし、健康長寿を目指すなら聴こえに関して、生活上困るようになってきたら始め時

具体的には(加齢性変化による難聴で、良くある訴え)

  • 「音は聞こえるけど、何て言っているか解らない」
  • 「TVの音の大きさで、家族と喧嘩になる」
  • 「NHKのアナウンサーの声はわかるけど、ドラマは聞き取れない」
  • 「孫との会話に困る」
  • 「聞き返しが増えた」

など

視力が落ちたら不便だから眼鏡をかける
眼鏡をかけなさいといわれる前に、自発的に使いますよね?
補聴器も眼鏡のように生活に密接に関わる便利な道具と認識されることが理想です
しかし、眼鏡と決定的に違う部分があります!

補聴器と眼鏡の相違点

眼鏡

自分に適した度数(強度)の眼鏡が出来上がる
文字通り、視界が開けて即効果を実感できる!

補聴器

初回装用時、うるさく不快に感じてしまうことが非常に多い。
2~3ヶ月の調整とリハビリテーションが必要!!
今までの静かな環境に脳が慣れてしまっているため、補聴器を付けると
聞こえていなかった環境音や不快な音も一気に入ってくるので、不快に感じてしまう。
⇒ 目標値の70%から補聴を開始し、徐々に入力を豊富に調整していく必要がある

補聴器の悪いイメージとして…

  • 1 格好悪い

    「年寄りと思われたくない。」「まだ使わなくても何とか大丈夫。」
    社会全体として補聴器が有益なものと認知されていない(眼鏡との決定的な違い)

  • 2 高い

    何十万もかかると思っている。
    ⇒ 「高い補聴器が良い補聴器」ではありません!
    高い補聴器でも、適切な調整とリハビリをしないと箪笥の肥やしになります、、、。
    約10万円の補聴器でも適切な調整とリハビリにより生活上なくてはならない補聴器になります。

  • 3 効果がなかった。(家族や友人から効果がないと聞いた)

    調整の不備や補聴器に対する理解不足が原因であるケースもあります。
    聞こえの細胞のダメージは人それぞれです。(語音聴力検査を受け、自分の聴力を理解しましょう)

補聴器はオーダーメイドであり、調整が重要です!!
⇒ 新聞・広告で補聴器(安価の物はおそらく集音器です)を買わないでください!!

聴覚障害を克服するために

「あきらめ」、その反対に「過剰な期待」を持つ前に、調べましょう!!
⇒ つまり、自分の耳の状態を知ることが聴覚改善の第一歩
  聴力検査、語音聴力検査、側頭骨CT検査など必要な検査を受けましょう

  • 手術でよくなる可能性は?
  • 手術(治療)をしないと危険な中耳炎の可能性も(真珠腫性中耳炎)
  • 補聴器で聴覚改善(効果)が見込める可能性を知る
検査の結果、補聴器でも残念ながら効果低いと思われる難聴に対しては
  • 身体障害者認定による公的補助
  • 人工内耳の適応

について検討し、対応します。

難聴・補聴器専門外来の流れ

目的
「個人個人に最適な、聴覚改善への対処法の提示、実践」
豊富な音入力による、聴覚リハビリテーション
方法
①難聴の原因を知る
  • 診察時の会話状況で難聴の程度を推察
  • 鼓膜の観察(中耳疾患の観察)
  • 標準純音聴力検査:大まかな難聴の指標を評価
  • 語音明瞭度検査:聞こえの質を評価
  • 手術適応症例の検討:側頭骨CTで評価
②実際の対処
手術により改善が見込めそうな症例⇒ 手術による根本的な治療
見込ない症例⇒ 補聴器による聴覚リハビリテーション

補聴器による聴覚リハビリテーション

「宇都宮方式」

  • 現在の耳の状態、補聴器の使用によって期待される効果を説明
      (補聴器装用に意欲のある方が対象)
  • 補聴器貸出:その際、最終目標入力値の70%で開始
  • 特に装用初期1~2週間は頑張りどころ!!
  • 数週おきに、少しずつ入力を上げていく
  • 約3ヶ月(約6回通院)で目標値まで入力する
      「補聴器適合検査」を行い、調整と評価を繰り返していく

⇒ 難聴者にとって、そして調整する側としても根気のいる作業ですが、
適切な調整と聴覚リハビリテーションにより聴覚改善が見込めます。

(株)マキチエ 冊子より引用

まとめ ~健やかな聴覚を目指して~

  • 1 難聴・聴覚障害は生活の質の低下につながる

    健康寿命の延長には難聴・聴覚障害の克服が必要です

  • 2 難聴者に対する支援を有効に活用しましょう

    2025年4月、町田市にも高齢者補聴器購入費助成制度が導入されました

  • 3 難聴・聴覚障害の原因を知り、個人個人に適切な対処法を実践することが重要

  • 4 補聴器の適切な調整と根気強い聴覚リハビリテーションにより聴覚改善が見込めます

    (新聞広告や、通販での安易な購入は控えましょう)

自分の聴こえの状態を正確に知った上で、適切な対応をしていくことが、聴覚障害の改善につながります。
難聴・聴覚障害を克服して、健康長寿を目指しましょう!!